2011年06月08日

iTunes Match はすごい(2)

いくつか補足。
まず、pirates amnestyについての関連記事へのリンク。

 ウォールストリートジャーナル日本版
 
 フォーブス(英語)
 
 CNN(英語)

あと、先の記事では

  iTunes Matchを使うと、ユーザのコンピュータ内にあ
  る音楽ファイルをスキャンして、iTunesで提供されて
  いる楽曲と照合して一致(Match)した場合、ユーザの
  iCouldアカウントには、ユーザーのパソコン内の音楽フ
  ァイルではなくて、「iTunesで提供されている高音質の
  ファイル」が保管される。(正確には、保管されるとい
  うよりもiTunesの購入履歴にフラグが立つような感じ?)

としたが、deduplication技術を採用しているとのニュースも
あるので、(・・・)内が近かったよう。
とすると、このiTunes Matchはアップルにもメリットが大き
いということになる。なぜなら、データセンタに冗長なファイ
ルの保管が不要になるから(もっとも、ストレージスペースの
節約ということもあるだろうけど、重要なのはリンクで済ませ
ることで、システムが安定するのだと思う)
関連して

 アルファブロガー小飼弾さんの記事
 「news - iCloudの容量がたった5GB/IDで足りるわけ」

ところで、iTunes Matchを知れば知るほど、MP3.comの
Michael Robertosonは天才だったのだなと。
彼が11年前にリリースしたMy.MP3.comサービスは、「権
利者と契約していない以外は」(←ここ重要)iTunes
Matchと似ている。彼は権利者と契約せず、フェアユースを
主張して敗れてしまったけれど・・・。
ジュリスト2011年6月1日号に「まねきTV・ロクラクU
最判のインパクト 米国における関連事例の紹介 番組リ
モート録がサービスとロッカーサービスの場合」という
記事中にRobertson氏が現在関わっている裁判について
とありあげた記事を書きましたので、ご覧ください。記事
中には前記のdeduplication技術も触れています。
← 有斐閣さんに代わって宣伝)

ということで、iTunes MatchについてRobertson氏はどう
言っているのだろうと思って、彼のtwitterをみると

  Robertson氏のtwitter記事
  
えらく否定的。リンク先の記事を読むと、サーバ型のDRM
が採用されていることが問題との認識のようである。彼曰
く自分はDRM反対派だということであるから、さっきのよ
うにiTunes MatchとMy.MP3.comを並べると失礼かも。

ところで、リンク先の記事中のLalaという会社とAppleの
関係が気になってGoogle先生で検索すると、Robertson氏
が1年半近く前に記事がヒット。

  TechCrunchの記事

なるほど、Lalaという会社を買収して、その技術とビジネ
スモデルをブラッシュアップした訳か・・・。ほとんど正
確に昨日のAppleのリリースの方向性を予測している。
音楽業界にとっては敵なのだろうが、やはりRobertson氏
はすごい。
(ジュリストの記事を書く前にこの記事読んでおくべきだ
った。さらっと紹介できていたら読者の皆さんに情報提供
になっていたろうに。調べが甘かったか・・・)

以上、諸々補足まで。
| 日記

iTunes Match はすごい

昨日発表になったiCloudであるが、新聞報道等からする限り
iTunes Matchはすごいと思う。
(以下、新聞記事・ネット記事・ブログ情報などによるもの
で、勘違いもあるかもしれません。そのときは訂正します。
割り引いて読んでください。)

iTunes Matchを使うと、ユーザのコンピュータ内にある音楽
ファイルをスキャンして、iTunesで提供されている楽曲と照
合して一致(Match)した場合、ユーザのiCouldアカウント
には、ユーザーのパソコン内の音楽ファイルではなくて、
「iTunesで提供されている高音質のファイル」が保管される。
(正確には、保管されるというよりもiTunesの購入履歴にフ
ラグが立つような感じ?)

このサービス、ユーザーとしてはファイルをアップする手間も
不要だし、音質も良くなるし、iTunesの機能も使えるし、と
年額$24.99を支払う魅力のあるサービス。

ただ、著作権の観点からこのサービスがすごいのは次の2点
にある。

まず、世の中のあらゆる音楽をiTunesに同期させ取り込むと
ころ。というのも、iTunes Matchは、楽曲ファイルのフィ
ンガープリントを抽出してscanやmatchに利用する模様。
当然、ユーザの手元の音楽がどこから来たものかは問わな
い(というか、技術的に問えない)ようである。
ということは、例えばamazon.comで購入した音楽でも、
このサービスを使えばiTunes上で利用できるようになる。つ
まり、サービスを乗り換えたから、コンテンツを購入し直す
必要はないことになる。サービスを乗り換えても、コンテン
ツオーナーシップが維持されるのである。
(さらにいうと、普通ならXというサービスで入手した音楽
をYというサービスで利用しようとすると、Xサービスの採用
するDRMを回避する必要が出てくるかもしれないが、今回の
場合は音楽ファイル自体はreplaceするわけなので、DRM周り
の問題もないはず)

次にすごいのは、海外のブログなどで"pirate amnesty"
(海賊に対する恩赦)と呼ばれている部分。
ユーザの手元の音楽の出所を問わないのだとすると、仮に
それが怪しいところから入手した、権利者からすれば許せ
ない存在の音楽も対象になるということである。つまり、
このサービスを利用すれば、そういった音楽も、ライセン
スのあるiTunes上の正規の音楽に変身することになる。
そんなわけで"pirate amnesty"と呼ばれているらしい。
もっとも、amnestyというのが正しいかどうかはよく分か
らなくて(過去の行為が不問になるかは分からない)
"pirate collection"(海賊の更正)が正確かも・・・
また、ボストンヘラルドの記事によると、iTunes Matchの
料金の70%以上はレコ−トレーベルに分配されるそうなの
で、レーベルの立場で見れば、ライセンスのない楽曲から
利益を生み出すことが可能になる、まるでヒートポンプの
ような技術(ヒートポンプとは、エアコンの基本技術であ
り、真冬の寒い外気から「熱」を吸収して、室内を暖房す
る熱として利用している。一見価値(熱)などないような
ところから、価値を生み出すという意味で使ってみた。)
クラウドを用いた音楽利用で、「自炊」が一般化する前に
機先を制した形。

先日来、いくつかのところで、「クラウドコンピューティ
ングと著作権・序説」というタイトルで報告させていただ
いたが、その際キーワードを「同期」「コンテンツオーナ
ーシップ」「権利者とユーザーのイニシアチブ争い(自炊
との競争)」としたが、大きく外れていなかったようで
ホッとした。

 Cloud-1.pdf
 Cloud-2.pdf      いずれも関連部分の抜粋版

ところで、こういったサービスの仕組み、ビジネス部門だ
けでなくて、法務部門もチームを組んで練り上げたはず。
著作権に関する企業法務というと、権利の保護関連の活動、
ライセンス契約、訴訟対応、コンプライアンスなどが思い
浮かぶが、こういったイノベーティブな仕事を実現された
法務関係者は、尊敬します。


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