Viacom v. Youtubeの事件、連邦第2巡回区控訴裁判所の判決が出た。
結論としては、Youtubeの申立を認めた地裁判決を取り消して、事件
を差し戻したので、Youtubeにとって状況が不利になったことは間違い
ない。ただ、結論だけを見ると混乱しかねないので、備忘録的に以下、
簡単にメモ。
・DMCAのセーフハーバーに関する解釈が大きく変わった、潮目が変わ
ったということではなさそう。
自分のシステムに侵害が存在するだろうと一般的に認識しているだけ
では現実の認識や危険信号の認識とはされず、個別具体の認識が求め
られるという解釈は以前維持されている。
(従前の解釈の詳細については、拙稿参照。)
問題は、Youtube社内でのメールなどに、現実の認識をうかがわせる
記述が存在したこと。証拠の評価・事実認定の問題。
・現実に認識があったと裁判所は結論づけたわけではない。
地裁は、Youtubeの事実審理省略判決の申立を認めたが、事実審理省
略判決を出すためには、全ての証拠を申立をしなかった側に有利に解
釈しても、重要な事実に関する真正な争いがないとされる場合でない
といけない。本件の場合は、申立をしなかった側(Viacom側)に有利
に証拠を解すると、現実の認識があったと陪審が判断する可能性があ
るということで、事件は差し戻された。差し戻された地裁では、どち
らに有利ということなく判断が行われるため、果たして、事実認定の
問題として現実に認識があったとされるかどうかまでは分からない。
・控訴裁判所レベルで、動画投稿サイトの運営者について、DMCAの適用
の有無が争われたのは、本件が初めてではない。
じつは、第9巡回区控訴裁判所が、UMG v. Veoh事件の控訴裁判決を
昨年出しており、それでは、サイト運営者はセーフハーバで保護され
るとした地裁判決が維持されている。(地裁判決については、上記拙
稿参照。)
個人的には両判決に齟齬はほとんどないと理解しているが、仮にあっ
たとしても、第2と第9の判決の重みはほとんど変わらないはずであ
り、控訴裁間で判決の相違が明らかになったに過ぎない(繰り返すが、
法解釈論として、ほとんど差はないと思う。)。
・なお、DMCAセーフハーバの文脈で、willful blindness(故意に目を
覆い、耳を塞ぐこと)法理が適用されうるとしたことは、大きな意味
を持つと思う。
ただし、Youtubeがwillful blindnessであったと裁判所が判断したわ
けではないので、注意。あくまでも、法理としては使えるので、それ
に当たるかどうか地裁で判断せよと言ったのみ。
他にも論点はあるが、取り急ぎ。
なお、できる限り早く、本件の評釈を執筆するつもり。